家族や友人、あるいは仕事で関わっている方が、大切な人を亡くしたとき。
「何と声をかければよいのだろう」
「励ましたいけれど、傷つけてしまわないだろうか」
「そっとしておいた方がよいのだろうか」
そんなふうに迷ったことはありませんか。
相手を大切に思うほど、言葉を選ぶのが難しくなることがあります。何か言わなければと思いながら、うまく言葉が出ず、連絡するタイミングを逃してしまうこともあるでしょう。
グリーフケアの視点で大切にしたいのは、上手な言葉を探すことだけではありません。相手が話したいこと、今は話したくないこと、その両方を尊重しながら関わることです。
今回は、死別を経験した方への声のかけ方と、言葉以外にもできる支えについて考えます。家族や友人としてはもちろん、医療・介護・福祉の現場でご遺族と接する方にも、日々の関わりの参考にしていただければ幸いです。
1.声をかける前に、気持ちを決めつけない
グリーフとは、大切な存在を失ったときに生じる、心や身体、行動などのさまざまな反応です。
死別後の気持ちは、悲しみ一つでは言い表せません。寂しさや怒り、後悔、戸惑いが入り交じることもあります。同じ人でも、その日によって感じ方が変わります。
だからこそ、「家族を亡くしたのだから、こう感じているはず」と決めつけず、目の前の人の言葉を聴くことから始めたいものです。
例えば、長い介護を終えた方が「少しほっとしています」と話すこともあるでしょう。その言葉だけで、大切にしていなかったと判断することはできません。別れの寂しさと、張り詰めていた時間が終わった安堵が、同時にあるのかもしれません。
また、涙を見せない人に「我慢しないで泣いて」と促す必要もありません。話してくれたこと以上を推測しすぎず、本人が表せる範囲を大切にする姿勢が、安心につながります。
2.最初の言葉は、短くてもかまいません
訃報を受けたときは、まずお悔やみの気持ちを伝えることが基本です。仕事上の関係であれば、「心よりお悔やみ申し上げます」と、落ち着いて伝える形もあるでしょう。
親しい方には、普段の関係に合った言葉でかまいません。
「知らせてくれてありがとう。何と言えばよいか分からないけれど、あなたのことを気にかけています」
長い文章や立派な言葉でなくても、自分の気持ちを誠実に伝えることはできます。言葉が見つからないことを、無理に隠す必要もありません。
ただし、「何と言えばよいか分からない」と伝えた後に、相手に自分を慰めてもらうような流れにならないようにしたいものです。中心にあるのは、悲しみを抱えている相手の時間です。
死別の経緯を詳しく尋ねることも、最初の声かけで必ず必要になるわけではありません。「最期はどうだったの」「なぜ亡くなったの」と質問を重ねる前に、その人が今、何を話したいのかを待ってみましょう。
3.「元気にする」ことを急がない
「元気を出して」
「前を向いて頑張って」
「いつまでも落ち込んでいたら、亡くなった人が心配するよ」
こうした言葉は、励ましたい気持ちから出てくるものです。実際に、その言葉に支えられる方もいるでしょう。
一方で、今は悲しむことで精いっぱいの方には、「早く元気にならなければ」と負担になる場合もあります。言葉がどう届くかは、関係性やタイミングによって変わります。
大切なのは、特定の言葉を一律に禁止することではなく、相手の反応を見ながら関わることです。
例えば、「何もする気になれない」と言われたときに、すぐ「外に出た方がいい」と提案する前に、「今は何かをするのもしんどいんですね」と受け止めてみる。その後で、本人が望むことを一緒に考えることもできます。
もし自分の言葉が負担になったと気づいたら、「急がせるような言い方になってしまいましたね」と伝え直してかまいません。関係は、一度の声かけだけで決まるものではありません。
4.「気持ちは分かる」と言い切らずに聴く
自分にも死別の経験があると、「私も同じだった」と話したくなることがあります。経験を共有することが、相手の孤独を和らげる場面もあるでしょう。
ただ、同じ続柄の人を亡くしたとしても、関係や暮らし、別れの経緯は異なります。
自分の経験を話すときは、「私の場合はこうでしたが、あなたとは違うかもしれません」と、その違いを残しておくことが大切です。相手の話が、自分の体験談に置き換わっていないかも振り返ってみましょう。
「私はこうして立ち直ったから、あなたもやってみて」と結論を急ぐと、相手は自分の気持ちを話しにくくなるかもしれません。
聴くときには、「分かったつもりにならない」という姿勢が役立ちます。すべてを理解できなくても、「そのことを、もう少し話したいですか」と尋ねることはできます。
理解の深さを示そうとするより、相手の言葉を大切に扱うこと。その積み重ねが、安心して話せる関係をつくっていきます。
5.後悔の言葉には、すぐ答えを出さなくていい
「もっと早く病院に連れていけばよかった」
「あの日、電話をしておけばよかった」
「最期に、あんなことを言わなければよかった」
こうした言葉を聞くと、「あなたのせいではない」と、すぐに安心させたくなるものです。
けれど、その方は責任についての結論を求める前に、胸に残っている出来事を誰かに聞いてほしいのかもしれません。
「その日のことが、ずっと心に残っているんですね」
「伝えたかったことがあったんですね」
本人が話した内容に沿って、受け止める言葉を返すこともできます。
ここで注意したいのは、気持ちを受け止めることと、責任を認めることは別だという点です。「そうですね、もっと早ければ」と同意する必要はありません。また、事情が分からないまま、医療上の因果関係を断定することも避けたいものです。
後悔の中には、悲しみだけでなく、確認したい事実が含まれる場合もあります。説明を求めているのか、気持ちを聴いてほしいのかを確かめ、必要であれば適切な相談先につなぎましょう。
6.沈黙や、話したくない気持ちを尊重する
声をかけた後、会話が途切れることがあります。
その沈黙が気になって、質問や励ましで埋めたくなるかもしれません。しかし、相手は言葉を探しているのかもしれませんし、今は話す力が残っていないのかもしれません。
「今は、話さなくても大丈夫です」
「少しここで、一緒に過ごしましょうか」
関係性に応じて、そんな言葉を添えることもできます。
もちろん、誰かと一緒にいること自体が負担になる日もあります。「今日は一人でいたい」と言われたら、その希望を尊重しましょう。そのうえで、必要なら次の連絡について相談しておくと、距離の取り方を一緒に決められます。
例えば、「今日はここで帰りますね。来週、短いメッセージを送ってもいいですか」と尋ねる形です。
肩に触れる、手を握るといった行動も、人によって受け止め方が違います。親しさだけで判断せず、相手の意思を確かめることが大切です。
7.「何かあれば」から、選べる小さな提案へ
「何かあったら言ってね」は、温かい言葉です。ただ、悲しみや疲れの中にいる方にとって、何を頼めばよいか考えること自体が難しい場合もあります。
そこで、自分ができることを具体的に伝えてみましょう。
「明日、買い物に行きます。必要な物があれば一緒に買ってきましょうか」
「書類の整理で困っていたら、土曜日に一時間ほど一緒に確認できます」
提案は、相手が選べる大きさにすることがポイントです。「全部やってあげる」と広く引き受けるより、できる範囲を伝える方が、頼む側も判断しやすくなります。
また、「今回は必要なければ、断って大丈夫です」と添えることで、受け入れなければならないという負担を減らせます。
遺品や写真、部屋の片づけは、特に本人の意思を大切にしたいことです。良かれと思って先に処分したり、配置を変えたりせず、触れてよい物と、今はそのままにしておきたい物を確認しましょう。
8.葬儀の後にも、無理のないつながりを
葬儀の前後には連絡が集まっていても、その後は周囲が日常に戻り、声をかける機会が減っていくことがあります。
そんな時期にも、相手が望む形で関係を続けることはできます。連絡をするときは、励ましや近況報告を求めることだけが目的でなくてもよいでしょう。
「今日はあなたのことを思い出して、連絡しました。返信は急がなくて大丈夫です」
こうした短いメッセージも、一つの方法です。ただし、返事がないからと繰り返し連絡したり、訪問を重ねたりすると、負担になる可能性があります。頻度や方法は、本人の希望に合わせたいものです。
命日や誕生日なども、声をかけるか迷う日です。思い出に触れてほしい方もいれば、静かに過ごしたい方もいます。「その日はどう過ごしたいですか」と、事前に相談できる関係であれば尋ねてみましょう。
忘れずに気にかけることと、踏み込みすぎないこと。その両方を考えながら、つながりを続けることが大切です。
9.医療・介護の現場で伝えられる、その人の姿
医療・介護・福祉の現場では、ご家族に何を伝えればよいか迷う場面もあるでしょう。
お悔やみの言葉に加えて、実際に関わった中で知っている、その人らしい姿を伝えることもできます。
「お庭の花のお話を、よく聞かせてくださいました」
「この音楽が流れると、口ずさんでいらっしゃいました」
ご家族が知らなかった日常の一場面が、大切な記憶になることもあります。ただし、これは伝え方の例であり、実際に確認した出来事だけを伝えることが前提です。
慰めたい気持ちから、「最期まで何も苦しまれませんでした」と、分からないことまで言い切る必要はありません。事実と、自分が感じたことを区別して伝える姿勢が、信頼を守ります。
また、ご家族への連絡や情報共有は、本人・ご家族の意向、守秘義務、所属先の方針を踏まえて行いましょう。職員一人の善意だけで継続的な支援を抱え込まず、チームで対応できる範囲を確認することも大切です。
10.支える人も、相談してよい
誰かの悲しみに触れ続けると、支える側にも疲れや無力感が生まれることがあります。「自分が何とかしなければ」と考えるほど、離れにくくなることもあるでしょう。
できることと、難しいことを伝えるのは、冷たい対応ではありません。
「今日は三十分ほどなら話を聴けます」
「その相談は、詳しい方に一緒に確認しましょう」
そう伝えながら関係を続けることもできます。支援する側が休み、必要に応じて相談することは、無理のない関わりを続けるために必要です。
相手が眠れない、食べられない状態に困っている、日常生活を保つことが難しいなどの場合は、かかりつけ医や専門の相談先につながることを提案しましょう。「悲しみだから仕方がない」と、すべてを見過ごす必要はありません。
自分を傷つけそうな様子など、差し迫った危険があるときは、声かけだけで対応せず、救急など緊急の支援につなぎます。悲しむ時間を尊重することと、必要な支援を受けることは、両立できます。
11.パパンが大切にしたい、地域での関わり
一般社団法人パパンは、喪失を経験した方の思いに目を向け、地域とのつながりを大切にしたグリーフケア活動を行っています。
悲しみを抱えた方が、いつ、どこで、誰に話すかは、その方自身が選べることが大切です。家族には話しにくいことを、地域の場で話せる場合もあるでしょう。一方で、まだ誰にも話したくないという気持ちも尊重されるべきです。
私たちは、こもれびの会などの活動を通じて、気持ちを分かち合える機会を大切にしていきたいと考えています。活動について知りたい方は、ホームページのお知らせやお問い合わせからご確認ください。
また、医療・介護・福祉など、地域で人を支える方々とグリーフケアを考えることも大切にしています。日々の短い声かけや、ご家族の話を聴く時間にも、できることがあります。
相手の悲しみに、すぐ答えを出せなくてもかまいません。
「どんなふうに過ごしたいですか」
「今、私にできることはありますか」
そんな問いを持ちながら、その人の希望を確かめていく。言葉に迷ったときも、関係を急いで閉じずに、無理のない関わり方を考えていく。
大切な人を亡くした後にも、自分の思いを大切に扱ってもらえる。パパンは、地域の中にそうした関係を少しずつ広げていきたいと考えています。
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